東京高等裁判所 昭和50年(ネ)305号 判決
第一九六号事件控訴人、
第三〇五号事件被控訴人
(第一審被告)
株式会社 三井銀行
右代表者
小山五郎
右訴訟代理人
各務勇
外一名
第一九六号事件被控訴人、
第三〇五号事件控訴人
(第一審原告)
(旧株式会社第二藤井荘)
ふじハイツ株式会社
右代表者
藤井孝
右訴訟代理人
平山知子
外一名
主文
原判決中第一審被告敗訴部分を取消す。
第一審原告の各請求を棄却する。
第一審原告の本件控訴を棄却する訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。
事実《省略》
理由
一当裁判所は、第一審原告の本訴請求はすべて棄却すべきものと判断する。その詳細は次のとおり付加訂正削除を行い原判決の理由を引用する。
二一ないし四〈省略〉
五同二二枚目表四行目から末行までを「しかし取引停止処分は、手形支払義務者の営業に致命的ともいうべき不利益を与えるものであるから、当事者間に特定の契約がなくとも、当該手形取引に関与する者は、取引上の信義則として、手形支払義務者のため、不渡処分が理由なく生じないよう適切な措置をとるべき義務があることは当然のことである。そして、「取引停止処分後の解約」については、不渡届消印手続をとることは無意味であるにかかわらず、「取引停止処分後の解約」なる符箋の付せられた本件手形の支払義務者から、不渡届消印手続依頼書が提出されたのであるから、その間に矛盾があり疑念の生ずべき筋合であるが、〈証拠〉によると、不渡手形の処理については、銀行も神経を細かく使い、かつ事実を明確にした上で不渡手形の受渡しをしているところ、不渡事由については、顧客の体面を考え、また、他の銀行との取引に関することでもあるから余り深く詮索することなく、不渡手形の符箋の記載により判断し処理していることが認められる。そうすると、不渡手形の符箋の記載は支払銀行が資金、取引等を調査して不渡となしその事由を記載するのであるから、持出銀行としてはこの符箋の記載を信頼するほかなく、第一審原告代表者藤井成一から本件手形の不渡事由につき特段の説明と、それに基づき不渡届消印手続の依頼がない限り、三井銀行錦糸町支店が第一審原告の体面を考慮し、本件手形につき不渡事由をとやかく詮索することなく、その符渡の記載を信頼し「支払停止処分後の解約」として、不渡届消印手続をとらなかつたとしても、第一審被告に前記不渡処分避止についての義務の不履行ないし過失があつたとはいえない。」と訂正する。〈以下省略〉
(渡辺一雄 田畑常彦 丹野益男)